新規免許取得の方法

新規で教習所へ通って自動車免許取得に挑戦する方の多くが、病気や障害のある子どもたちです。聴覚障害をはじめとして、肢体不自由や知的障害、発達障害などの子供たちが免許取得に挑戦しています。また、子供たちに限らず大人であっても、新規で免許取得に挑戦する人がいらっしゃるようです。挑戦と書いてありますが、障害者の免許取得は当たり前ではなく「挑戦」です。挑戦には失敗が付きものです。健常者の免許合格率はおおよそ80%程度と言われていますが、障害のある人の合格率は統計情報としては公開されていませんが、健常者をかなり下回るのではないかと当会は考えています。

障害を有する教習生数(H28) 四肢障害者 聴覚障害者 その他
教習者数 513人 392人 128人

*一社)全日本指定教習所協会連合会資料より引用

■基本的な手順

新規で免許取得に挑戦する障害者も、健常者が行う教習内容と違いはありませんが、教習所へ入所するために特別な準備が必要です。

1、適正相談を受ける
教習所へ入所する前に、地元の運転免許センター(運転免許試験場)で本人の障害の程度や部位などが、免許証を取得する条件に合致しているかどうか検査をします。これを適性検査と言います。具体的には#8080へ電話をし、新規で免許を取得する希望があることを申告します。適性検査の予約を行い、当時は免許センターへ出向きます。適性検査では、運転席への乗り降りや、ハンドルやブレーキの適切な操作や操作のための筋力、ペダルの踏み替えの時間などを検査します。また、障害によっては視野検査や認知機能の検査をシミュレータを使って行うところもあります。検査の内容やその基準値については、都道府県の免許センターによりまちまちですので、実際に合否が緩い地域と厳しい地域があります。
2、免許に条件を付けてもらう
適性検査で合格すると、運転に必要な免許条件が付与されます。例えば両足に障害があれば「手動式限定」右足に障害があれば「左アクセル等限定」その他必要に応じて「旋回装置限定」「ウインカー移設限定」など、限定の条件の中身や判断の基準は、都道府県によって異なります。この条件が付与されたら、その条件を満たす自動車以外乗ることが禁止されます。従って、出来るだけ条件は付かない方がよいのです。例えば右足に障害があってペダルの踏み替えがしづらい場合は、通常左アクセル限定が付与されますが、リハビリなどによって右足の状況が改善する可能性ががあるなら、リハビリなどで改善した後免許取得に挑戦するほうが良い時もあります。
3、教習所を探す
適性検査に合格したら、いよいよ教習所を探します。ご自身の免許条件に当てはまる教習車が準備されている教習所を探します。地域によっては探すことが出来ない場合もあります。この場合は自分で教習車を用意することが必要になります。自分で教習車を用意する方法については下段を参考にして下さい。日本には少数ですが全寮制の身障者対応の教習所もあります。
4、教習車の入手
教習車を自分で用意しなければならい場合の最大のリスクは「免許が取れなかった場合に自動車が無駄になる」という点です。日本での免許試験合格率はおおよそ8割程度ですので、約2割の人は免許試験に不合格となっています。障害がある人の場合ならなおさら合格率は低くなるかもしれません。教習所から「自分で教習車を用意してください」と言われたら、教習車の基準に即した自動車で、なおかつ免許条件が付いた改造が行われている車を準備しましょう。教習車に使える車には大きさなど条件がありますので、「障害者用の運転補助装置を扱っている業者」に相談してください。
5、教習の流れ
教習自体は健常者の場合と同様の教習を受けます。

■知的障害や発達障害児者の自動車免許取得

知的障害や発達障害があっても、免許取得に挑戦している人たちは少数ですがいらっしゃいます。知的障害の場合は、学科授業についてゆけるかどうかが肝と言われています。また、発達障害の場合は、集団での授業や教習に困難が伴うケースがあるようです。非常に少数ですが国内では発達障害児者を受け入れる自動車教習所や、学科試験へ向けてサポートするボランティア組織などがあるようですので、探してみることをお勧めします。

■肢体不自由児者の自動車免許取得

運転免許の取得に必要な身体能力があるかないかについての判断は、個別の程度や状況によって様々なであり、一般的に自動車座席への自力での移乗。ハンドルを握ったり回したりする筋力や機能。ペダルやレバーを迅速適切に操作できる能力など免許センターで試験します。下肢や上肢全体の障害も重要ですが、手足の指の状態など、細かいところまで評価することもあります。

■教習で躓いたら

教習所へ通い始めたけれどうまく運転できずに困った。このような相談は当会にも寄せられます。そんなときにはどうしたらいいでしょう?要因は多様ですが、もしかしたら教習車に装着された補助装置が「ご本人にあっていない」のかもしれません。手動装置や左アクセル、旋回グリップやウィンカー等の運転補助装置は、同じ機械であっても人それぞれ操作しやすい位置や形状が様々です。教習所は障害児者の教習を受け入れた経験がないというところが多いですので、障害者の運転についての知識を持っていないところが多いです。「運転補助装置はどんなものでも付いていれば運転できるはず」と誤解している指導員もいるはずです。もし、上手く運転できないと感じたら、そして、装置の調整で解決できそうな要因であれば、積極的に教習所に対して対応を求めましょう。特に車いす利用者が多く使用する手動装置の一部には、初心者では到底使いこなせないタイプの機器を準備している教習所があると聞いています。運転できないのは本人の体が原因のこともありますが、機器との相性に問題があることもあります。

■卒業できなかった場合の車の処分

障害児者が新規で免許を取得するには様々なハードルがあるのは事実です。無事に教習を受けるところまで進むことが出来たとして、全ての方が免許を取得できるとは限りません。もし、卒業することが出来ず、事前に購入した車が不要になってしまった場合、転売や下取りはかなり難しい、ということを覚えておいてください。特に車体に穴をあける改造が伴うような装置を取り付けた場合、その装置を取り外しても穴は残ってしまいますので、事故車扱いや下取り不能と扱われることがあります。こうなると残るのは車のローンだけになってしまいます。稀に自動車購入店への返品を要求するケースがあると聞いていますが、それは不可能だと思います。

■進行性の病気の場合

筋力が低下してゆく病気等の場合、免許取得から年が経つにつれて、運転に支障が出る程度まで筋力が落ちてゆくことがあります。運転に不安を感じたり、筋力が落ちてきたなどの自覚を持つことは、安全な運転を継続させるためには重要な要素になります。主治医がいる場合は主治医に相談したり、免許センターの安全運転相談窓口#8080に電話をして相談に乗ってもらいましょう。