送迎車の事故(スロープ)

前回の車椅子の固定のブログでもお伝えしましたように、車椅子移動車の保安基準が非常にずさんであることをお伝えしたと思います。あまりに形式主義的で、実態にそぐわない基準は、現実の自動車移動における車いす乗員の安全を軽視しているとしか言えないでしょう。
今回は送迎車の事故をテーマにしたブログの最終回になりますが、乗車用のスロープについてご紹介したいと思います。
車いす利用者が自動車に乗車する際、自力で移乗可能であるならば、一旦車いすから降りて、自動車の座席に座れます。しかし、そうはいかない方の場合、やはり車いすごと自動車に乗車してもらうことになります。
乗車の方法としては、リフトタイプとスロープタイプの二種類です。デーサービスや医療機関などでは、リフトタイプを使うことが多いかもしれません。また、デーサービスでも小規模な事業所などでは、スロープタイプを使用することが多いでしょう。リフトタイプは一般的にワゴン車などの比較的大型の車両に使われ、スロープタイプは乗用車や軽自動車で利用されます。
スロープは取り外しが便利で簡易に使用できますが、車高が高い自動車等に取り付けると、スロープの斜度が大きすぎて、車いす乗員を乗せることができなくなりますので、スロープを設けるには、自動車側の改造が必要になります。スロープ使用時に車高が下がるなどの特殊改造を行わないと、安全な乗車は不可能です。
スロープの保安基準を見てみましょう。
「自動車の用途等の区分について(依命通達)」の細部取扱いについてから抜粋
2 車いす利用者が容易に乗降できるスロープ又はリフトゲート等の装置を有すること。
ここにはスロープの構造や、強度、斜度についての規定は書かれていません。
このようなざっくりしすぎた基準は、もしかしたら、あまり基準を設けると、障害当事者の利便性を低下させる、という配慮だったかもしれません。
しかし残念なことに、このざっくりした基準の影響で、障害者とは無関係な人たちが、脱法的に8ナンバー取得をして、恩恵を受けている事例が、実はたくさんあります。
写真をお見せできないことが残念ですが、急斜面(40度~60度)過ぎて車いすの人を乗せることは事実上不可能です。ちなみにトヨタ自動車純正のスロープ車のスロープ斜面は9.5度です。また、このような車両は後部ドア開口部の高さが非常に低く、少なくとも大人の車いす乗員が中に入ることは不可能です。
スロープの問題は、車椅子移動車の事故とは直接関係がないと思います。なぜならこのようなスロープは当事者は使えないからです。他方で道路運送車両のずさんさを表す事例ではないかと思います。
このような道路運送車両法の保安基準のずさんさが、車いす乗員を危険にさらすだけでなく、障害者とは無関係の人の車椅子移動車登録を許し、本来障害者が受けるべき、消費税減免や自動車税の減免を得る行為を、皆さんはどうお考えになられるでしょうか。
私たちは、車椅子移動車の事故による、車いす乗員の重傷化問題について、
車椅子の固定や、シートベルトの件も含めて、いまこそ、形式主義的規制を乗り越え、実効性ある保安基準・告示等の改正が必要だと考えています。