脳卒中・脳外傷の運転免許手続き

最もハードルの高い手続きです。

脳卒中(脳出血・くも膜下出血・脳梗塞・一過性脳虚血発作など)や脳外傷の後遺症が残った場合の受傷後の運転再開は難易度も高く、希望通り運転再開出来る方は非常に少数です。特に認知機能に障害が残っている場合は、免許手続きが完了したとしても、その後繰り返し事故を起こすなど、安全な運転を継続させることは至難の業です。当会のレッスン事業を受けた脳卒中後遺症をお持ちの方の場合、当会の初回レッスン(運転再開第1日目)で片道1時間、往復2時間の運転で、安全に往復できた方は10%以下でした。

手続きの流れ

脳卒中や脳外傷で退院後に運転を再開する場合は、特別な手続きを行う必要があります。これを怠ると後に法違反に問われたりしますので、忘れずに手続きを行いましょう。

なお、手続きの流れは地域によって異なりますので、ここでは一般的な流れをご紹介します。

①まずは免許センターに相談します。
退院後、又は退院が決まったら、地元の免許センターへ電話をして、その後の免許手続きについて相談します。電話番号は#8080で、地元の免許センターの相談窓口(安全運転相談窓口)に直通で繋がります。電話では、病気や後遺症の状況などを聞かれます。また、免許センターへ出向くための予約日を決めます。
②免許センターへ行く
免許センターの安全運転相談窓口へ行き、そこで改めて病気や障害について説明します。また、どの様な用途で運転したいのか?どんな車に乗っているのか?家族構成や代替移動手段の有無など、詳細を尋ねられることもありますので、正直に答えましょう。なお、必ず本人が行くことが必要です。
③診断書の提出を求められることがあります
②の安全運転相談の結果、主治医が書いた診断書(認知機能について)を後日持参するように言われることがあります。必ずしも全員が提出するとは限りませんが、多くのケースで診断書提出が必要となります。診断書は免許センターへ提出のための専用の用紙ですので、必ずその用紙をもらいましょう。
④診断書を持って病院へ
現在通院中の病院、もしくは入院した病院に対して、診断書を書いてもらえるように頼みます。病院では様々な検査(神経心理学検査や、場合によっては運転シミュレータや教習所を利用した実車評価など)を行い、最終的に主治医が免許証の更新が出来る状態であるかを診断します。
注意点1
免許更新のための診断書は、通常医師が書く診断書とは異なり、病院や医師には書く義務はありません。あくまでも任意です。従って診断書の作成を行わない病院もたくさんあります。全ての病院が免許更新のための診断書作成を行っているとは限りませんので誤解しないでください。
注意点2
もし、自分の主治医が診断書を書く意志を持っていなかったら、その旨を免許センターへ伝えましょう。免許センターは指定医と呼ぶ医師を紹介してくれます。
⑤出来上がった診断書を免許センターへ持参する
診断書が出来上がったら、免許センターへ持参します。この際、提出の期限が定められている場合がありますので、遅れないようにしましょう。なお、特段の期限が定められていない場合の期限は、次回の免許更新期限日となります。
⑥臨時適性検査を行う
診断書を持参した際に、臨時適性検査を行います。特に四肢のいずれかに障害がある場合は適切な操作が出来るかどうかの検査を行います。この検査で身体の状態によっては免許条件が新たに付与されます。
⑦合格したら
診断書の内容と身体障害の状態を総合的に判断して、問題が無ければ免許証は新たに更新され、手元に戻ってきます。その際、免許証の裏側に臨時適性検査実施済み等の記載が書かれることがあります。
⑧不合格だったら
合格よりも不合格の方が多いのが脳卒中・脳外傷の手続きの特徴ですが、不合格になるとその時点で「暫定免許停止処分」となり、運転は出来ない状態となります。
⑨不合格のその後1
不合格になった場合、その後文書で聴聞についての案内が郵便で届きます。聴聞とは、一連の手続きについて、本人の言い分があればそれを主張できる機会です。何か言って判断が変わるかと言えば難しいかもしれませんが、当会としては出席することをお勧めしています。
⑩不合格のその後2
聴聞の後、最終的に免許取り消し処分の決定のお知らせが郵送で届きます。
注意点1臨時適性検査ではどんな検査をするの?
臨時適性検査では診断書の内容の確認の他、肢体不自由についての検査を行います。まずは自力での乗降を検査します。自力で乗降できない場合、免許更新できない可能性が高くなりますので、適性検査を受ける前に自力でスムーズに乗降できるように練習を積む必要があります。また、片麻痺であれば、片手で迅速にハンドルを操作できるかや、右足でペダル操作が出来るかを検査し、出来ない場合は「左アクセル装置限定」等という免許条件が付きます。そのほかにも、ペダルの踏みかえの時間(おおよそ0,2~0.4秒と言われています)やブレーキを確実に踏むための足の筋力等も検査します。これらの検査の種類ややり方は、自治体によって異なります。
注意点2 診断書をもらったら中身を確認しましょう。
主治医から診断書をもらったら中身を確認しましょう。のりやセロテープで封印されていたら開けて構いません。そこに何が書いてあるのかを知るのは患者の権利です。また、診断書の内容について主治医から直接説明を受けましょう。もし、更新が出来ないような診断書であった場合、診断書にはその理由が書いてあります。患者が理由を知ることが出来れば、その理由を解消できるようなリハビリや訓練などを行うことが出来ます。
注意点3 取り消し処分になったら
取り消し処分を受けてから3年以内に免許証を復活させる制度があります。詳しくはこちらのページをご覧ください。

次のページでは脳卒中・脳外傷の免許判断基準についてご紹介します。